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中舌母音

/ə/

/ə/ には強勢を置くことはない。

/ə/ は「ア」から口を少し閉じたところを中心にした音だ。「ア」だけれども「ウ」にも聞こえるくらいのところが中心だ。

「中心だ」というのはちょっとおかしな物言いなのだけれど、強勢の無いところに使う音なのでいい加減、あまりはっきりと発音をしない。強勢のある母音をはっきりと発音しやすくするために、前後の音につられて「イ」にも「エ」にも「オ」にも「ウ」にもどれにでも近づいていくことがある。範囲が広い音だ。

例えば「ミシン」。”sewing machine” の “machine” (/məˈʃin/) だよ。”sewing” (/soʊɪŋ/) の /ɪ/ のあと、次の /i/ に備えて /ə/ は /ɪ/ や /i/ に近いところに留まって口の変化が少なくて済むように横着をするんだ。「ミシン」を使ったのは、たぶん、明治の女工さん。文字から入ると「マシン」なのだけど、耳が頼りの彼女らには「ミシン」って聞こえたのかも。

逆に、/ə/ ではない音も強勢の無いところでは /ə/ に近づいて曖昧になっていって、全て /ə/ の少し外れの音れだと思っても差し支えはない。/ə/ はたくさん使う音だ。

/ʌ/

/ʌ/ という発音記号を使っている辞書は多い。”come” (/kʌm/) とか ”cut” (/kʌt/) とか “onion” (/ˈʌnjən/) とかの母音だ。

これは /ə/ と同じ音だけれども強勢がある時にこの記号を使っていると考えてよい。/ˈə/ と同じで「ア」よりも口を少し閉じて発音をする。強勢があるので /ə/ のなかでもど真ん中、周りの音につられて動くことはあまりない。

/ɚ/

/ər/ という記号を使っている辞書もある。/r/ のように少しこもった音をさせるのだけれど、/ə/ の後で /r/ を発音するというわけではない。そういう勘違いをしないよう、一つの母音であることを強調するのにここでは /ɚ/ という記号を使うよ。”earth” (/ɚθ/)、”bird” (/bɚd/)、”firm” (/fɚm/) など、強勢のある場所で出てくる。

/ə/ あるいは /ʌ/ から舌の奥の方を少し持ち上げて、舌の奥の左右のヘリを上の奥歯に触るようにするとこもった音が出てくると思う。

うまくできなかったら、あるいは、舌を /r/ の位置に置いて「アー」とか「ウー」とか声を出して練習をしても良いかも。/r/ は「チャ チュ チョ」よりも少し後ろ、ギリギリで「チャ チュ チョ」に聞こえる場所で「チャ チュ チョ」と言って舌先が上顎から離れたところだ。/r/ と同じで巻舌にする必要はないよ。

“passenger” (/ˈpæsəndʒɚ/) とか “player” (/ˈpleɪɚ/) のように強勢のないところで使う人もいるけれど、強勢のないところでは /ə/ でも構わない。みんなのイメージほど英語では巻舌は使わないし、そうしてしまうとなおさら、いかにも日本人なまりの英語っぽくってダサくなるんだ。

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