摩擦音は空気の通り道のどこかを狭くしてざらざらとした音を出すものだ。
初めに /f/、/v/ と /θ/、/ð/ について説明をしよう。普段から日本語では使わないので練習は必要だけれども、それほど難しい音ではない。
そのあとで日本語に近い音のあるもの、/s/、/z/、/ʃ/、/ʒ/、/h/ について説明をする。
/f/ と /v/
/f/ と /v/ は上の前歯と下の唇を使って空気の通り道が狭くなる場所を作って出す音だ。無声音だと /f/、有声音だと /v/ だ。
上の前歯の外側 (口の中側でなくて前面、鏡で見える側) を下唇の内側 (口の中側) に押し付けるようにして音を出す。
上の歯の先っぽで下唇を噛むようにしても同じ音を出すことはできるけれど、単語や文章の中で発音するとき、つまり前後にも発音する音がある場合、これをやってしまうと口が回らないはずだ。上の歯の外側と下唇の内側で空気の通り道の狭い場所を作るようにしよう。
日本語の「フ」は上下の唇を使って音を出している。そうではなくて、必ず上の歯と下の唇で音を出すんだよ。
有声音の /v/ は日本人がこれを発音するときは破裂音のようになってしまうことが多いようだ。”very” を「ベリー」のように発音していないかい?たとえ発音の場所が正しく上の歯と下唇であったとしてもだ。”violin” を日本語にすると「バイオリン」になってしまったり、そういう法則になってしまっているのだろう。
次に続く母音に強勢があるときだけで良いんだけれど、/v/ はよく響かせてから次の母音を発音するようにしよう。”very” は「vエレ」のような感じだ。
/f/ もよく響かせてから次の音を発音するとうまくいく。”ferry” は「fエレ」のようにだ。
/θ/ と /ð/
/θ/ と /ð/ は上の前歯と舌で空気の通り道の狭くなる場所を作る。無声音だと /θ/、有声音だと /ð/ だ。
舌先を上下の歯の間から外に出して、上の歯を舌先に立てるようにするんだ。
上の歯の裏側に後ろの方から舌先を近づけるようにしても同じ音を出すことができて、実はそうしたほうが前の音から /θ/ /ð/ へ、そして次の音へと口の形を動かしやすい。
でも、5 ミリも舌が上にずれたらそこは歯茎で、次に説明をする /s/ と /z/ になってしまう。日本語の「サスセソ」「ザズゼゾ」だ。日本人にとっては使い慣れた音で、どうしてもそっちに近づいてしまう。”Thank you.” は「サンキュー」になるし、”the” は「ザ」になってしまうということだ。
舌先を上下の歯の間から外に出して、確実に /θ/ と /ð/ の音を出すことができるように練習をしよう。
/s/ と /z/、/ʃ/ と /ʒ/
/s/ と /z/ は舌と歯茎で空気の通り道の狭くなる場所を作る。日本語の「サスセソ」、「ザズゼゾ」と同じ音だ。舌を歯茎より少し後ろに動かすと /ʃ/ と /ʒ/ になる。日本語の「シャシシュシェショ」、「ジャジジュジェジョ」と同じ音だ。どれも日本語にある音なので、これらを出すことは難しくないだろう。
注意が必要なのは「イ」に近い母音が後ろに続くときだ。日本語の「イ段」では舌が平らになる傾向がある。そのため歯茎よりも後ろの位置でも舌が口の天井に近づいてしまって /ʃ/ に近い音になるんだ。日本語には /si/、/zi/ に近い五十音はない。
そうは言っても「サスィスセソ」「ザズィズゼゾ」のように「イ」に近い母音の前でも /s/ と /z/ を発音すること自体は決して難しくないはずだ。厄介なのは「イ」に近い母音の前でも /s/、/z/ と /ʃ/、/ʒ/ を正しく使い分けることなんだ。
たとえば、”machine”。これは「マスィヌ」 じゃないぜ。「マシヌ」だ。英語っぽく発音しようとしてなんでも「スィ」「ズィ」って言っちゃう人って結構多いよ。英語では「スィ」「ズィ」も「シ」「ジ」も両方あって、正しく使い分けなければならない。
”She sells seashells by the seashore.” はどうだろう。「海岸で貝殻を売ってる。」だけど、/s/ と /ʃ/ だけでよいのだが正しく発音できる?「シセルズスィシェルズオンザスィショ」のような感じだよ。
/h/
/h/ は日本語の「ハヘホ」とだいたい同じだと思って構わない。
注意が必要なのは、まず、「イ段」と「ウ段」だ。日本語の「匕」はやはり舌が平らになってしまう。「匕」では舌の横のほうが奥歯にくっついて、「ハ」と比べると空気の通り道が細くなる場所が前のほうになっていないかい。「フ」では上下の唇で細くなる場所を作っているはずだ。「イ」、「ウ」に近い母音が続くときでも「ハヘホ」と同じ場所でザラザラとした音を出してから「イ」、「ウ」を発音しなければならない。
次に、強勢がある場所だけだけれども、日本語の「ハヘホ」よりもザラザラとした音を強く響かせることになる。例えば “hear” も /h/ の音を強く響かせて「hエア」のように発音する。どう?言いにくくないかい?/h/ はものすごいエネルギーが要る音なんだ。
そこでだ。今度は強勢のないところだが、/h/ の音は無くなってしまうことがよくある。/h/ の音を出そうとするとエネルギーが必要なのでサボっちゃうんだね。例えば、”He has gone.” は「エアズゴウヌ」とのように発音しても通じるはずだ。