鼻音というのは鼻からも息を出しながら発音をする子音だ。逆に、鼻音以外の子音は鼻に向かう息の通り道を塞いで、肺から出てくる空気を全部口から吐くようにしているんだ。
実験だ。「鬼の目にも涙」って声に出し言ってみよう。一度、筋肉に動きを教えてあげるためだ。絶対に声に出して言ってみて。
そしたら、すぐに鼻をつまんで、もう一度「鬼の目にも涙」って言ってみて。
どう?「おにのめにもなみだ」のどこかで息が外に出ていかなくて詰まっちゃわなかったかい?そういうことなんだ。普通は鼻音のところで鼻から息を出しているんだけど、それが鼻をつまんで空気の通り道をふさいじゃうと詰まっちゃうんだ。
二度目はなんとか言えると思う。口の筋肉が警戒してしまうので、口にも息が抜けるようになるんだ。それでも、「お でぃ ど べ でぃ ぼ だ び だ」みたいになってしまうだろ。
唇を閉じると /m/、舌を歯茎に付けると /n/、唇を開いて舌も歯茎に付けないと /ŋ/ だ。
/n/
/m/ も /n/ も /ŋ/ も発音するのは難しいことではないはずだ。でも、/n/ では注意が必要なことがある。
「二」
日本語の50音では次に母音の「イ」が続くと舌が平らになって舌の真ん中が上顎に近くなってしまう。舌の両横が上の奥歯にピッタリと付いてしまっていないかい?「二」では母音が /n/ で無くなってしまうんだ。
次に「イ」に近い母音が続くとき、舌の真ん中は下げて上顎との間に空間を作るように、「ネィ」のように発音をシなければならない。
「ン」
すでに「英語と日本語の音の違い」に書いたが、日本語では次のどのような音が続くかによって「ン」は /m/ にも /n/ にも /ŋ/ にもなる。
次に唇を閉じる子音が続くとき、つまり、/p/ /b/ が続くときは唇が閉じて /m/ になる。
次の子音が舌が上顎に付く音のとき、/t/、/d/、/ts/、/tʃ/、/dʒ/ が続くときは前の鼻音から次の音につられて舌が上顎に付いてしまう。/n/ の音だ。
それ以外の子音や母音が続くときには 唇も閉じないし、舌も口の中で宙にういた状態にっているはずだ。/ŋ/ になるんだ。
日本人の場合、特に /n/ は絶対に舌を上顎に付けるように注意をしなければならない。”an apple” は「アナプル」であるし、”an orange” は「アノレンジ」にしなければならない。
舌を上顎に付けると少しだけ面白いことが起きる。/n/ の次に /s/ が続くときだ。/n/ は舌が歯茎に付いているが、次の /s/ を発音するときに舌が歯茎から離れて小さな破裂音、つまり、小さくだけれど /t/ の音が聞こえるようになる。
例えば “dance” は「ダンス」? /dæns/ では /n/ と /s/ の間に小さな [t] の音が出て [dænts] のようになる。簡単に言えば、 “dance” は「ダンツ」のように発音をするのが正しいんだ。
/n/ と /s/ の連続は意外と多い。”once” は「ワンツ」、”inside” は「エンツァエド」のように発音をするクセを付けていくのも、/n/ は舌を歯茎につけて発音をするようにするための工夫の一つだ。
鼻腔破裂
「鼻腔破裂」という技を紹介しておこう。これは破裂音と鼻音が続くときに起きる。
“eaten” (/itn/) の /tn/ のところで使うんだ。「イ」と発音したあとで /t/ を発音するために舌と歯茎で空気の通り道を塞ぐよね。このとき、口の奥というか鼻の奥というかそのあたりで鼻へ向かう通り道も塞いで口のほう、舌と歯茎で閉じたところに圧がかかるようにしているんだ。
そうしたら、舌と歯茎は閉じたまま、鼻に向かう通り道のほうをポンと開いて鼻の奥の方で破裂する音を出すんだ。文字で表すのは難しいんだけど、「イ (t) ン」の「ン」を息んだように発音する。
“happen” (/hæpn/) では「ヘァ」のあと、/p/ のために唇を閉じ、同時に口の中では /n/ に備えて舌を歯茎に付けたら鼻に息を流して「ン」と 言う。唇は閉じたままだ。
“sudden”、”written”、”cotton”… たくさんあるよ。これらは鼻腔破裂を使って発音するのが普通なんだ。