破裂音は閉鎖を開放したあとは空気の通り道を大きく開いてしまうのに対して、破擦音は破裂のあとは空気の通り道を少しだけ開いて摩擦音で終わらせるものだ。
言葉で表そうとするとややこしいが、それほど難解なものではない。/ts/ と /dz/、/tʃ/ と /dʒ/、/tr/ と /dr/ の 6 つある。
/ts/ と /dz/
歯茎と舌で発音する音で、無声音だと /ts/ で有声音だと /dz/ だ。
/ts/ は簡単だ。日本語の「ツ」とほぼ同じ。50音では「ウ段」の「ツ」しかないが、「ツァ ツィ ツ ツェ ツォ」と、どの母音が続いても発音するのは難しくないはずだ。
/dz/ は /ts/ と比べると声帯を震わせるだけなのだが、日本人にとって は意外と難しい。どうしてでも /z/ になっちゃうんだよね。文字としては「ヅ」というのがあるのだけれど、たぶん、音声は「ズ」と同じになってしまっていて、日本語には /dz/ という音がないんだろうね。
英語でも /z/ になっちゃうんだ。例えば “cards” (/kɑɚdz/) を発音してみよう。/dz/ の部分は舌を歯茎にくっつけて破裂させている?ほとんどの人は舌は歯茎にくっつかないで /kɑɚz/ になっていると思う。これは “cars” だよ。/dz/ のときは舌を歯茎にくっつけて、/z/ ときちんと使い分ける練習が必要だ。
英語では名詞の複数形や一般動詞の三人称単数形では語尾に s を付けるので /dz/ の音は実にたくさん使っていて、しかも /dz/ を /z/ に置き換えると別の単語になるものもたくさんあるんだ。”maids” と “maze”、”raids” と “rays”、”toads” と “toes”、”beads” と “bees”、”AIDS” と “A’s”… これらをきちんと使い分けることができるようになろう。
ところでだ、”cards” の /k/ の後ろには気音を入れたかい?「khアヅ」のように発音するよ。
/tʃ/ と /dʒ/
/tʃ/ は /ts/ のやや後ろ、「チャ チ チュ チェ チョ」とだいたい同じだ。
声帯を震わせて有声音にすると /dʒ/ だ。/dz/ と /z/ の関係と同じで、日本人には /dʒ/ も /ʒ/ と区別をするのが難しいんじゃないかな。「ジャ ジ ジュ ジェ ジョ」ははっきりと発音しようとすると舌は上顎に付いて (/dʒ/ に近くなる)、早口になると上顎に付かない (/ʒ/ に近くなる) 人が多いのではないかな。
日本人は /dʒ/ も /ʒ/ も使い分けるのが苦手で、英語ではよく注意して使い分けるようにしなくてはならない。
“orange juice” (/ɔrəndʒ dʒus/) はもはや日本語だね。「オレンジジュース」だ。「オレンジ」の 最後と「ジュース」の最初はどっちも舌を上顎に付けようが付けまいが発音することができないかい?早口だと舌は上顎に付けないで「オレンジュース」になっちゃたりする。要するに日本語では /dʒ/ と /ʒ/ の区別がないんだ。
英語の “orange juice” は “orange” の最後も “juice” の最初も /dʒ/ だ。破擦音の /dʒ/ を 2 回続けて発音するよ。英語では /dʒ/ と /ʒ/ はべつのもので、/dʒ/ が /ʒ/ になることも /ʒ/ が /dʒ/ になることもない。
更に厄介なことにスペルからではどちらかわからないこともある。”garage” は /gərɑʒ/ だけれど “large” は /lɑɚdʒ/ だ。
破擦音の /dʒ/ と摩擦音の /ʒ/ は別のものだって知らなかったんじゃない?ここでそれがわかっただけも儲けものだよ。使い分けることができるように練習していこう。
/tr/ と /dr/
英語のネイティブスピーカが /tr/ を一つの音と捉えているのか、それとも /t/ と /r/ の 2 つの音と捉えているのかはわからない。でも、日本人にとっては /tr/、/dr/ は「破擦音」でそれぞれ一つの音だと捉えたほうが正しい発音ができる。
“try” は「トライ」でも「トゥライ」でもないんだ。/tʃ/ よりも舌を少し後ろに動かして、コモッた感じはするけれどもぎりぎり「チャ」と聞こえるくらいのところで「チャエ」と言ってごらん。少しだけ /r/ っぽい音が聞こえないかい?それが正しい “try” なんだ。
“dry” は同じように「ジャ」よりも舌を少し後ろに動かす。舌は上顎にくっつけるよ。そこで「ジャエ」と言うんだ。”true” は「トゥルー」じゃないよ。舌は同じ位置で「チュ」と言う。これが正しい “true” なんだ。
/r/ のところでも説明をするけれど、日本人は巻舌にしすぎる傾向がある。英語に対してそういう思い込みがあるのか、あるいは /r/ に対して意識過剰なのか、なんだか変な音になっている。特にロックンローラがカッコつけて歌っているときに変な /r/ の音を出すとチョーダサい。
/tʃ/ よりも少しだけ舌を後ろに動かすだけで、舌は反り返したり巻いたりしなくてもいい。ていうか、やっちゃいけない。「チェヌ」といえば “train” だ。